生活習慣で早期発見
昔はよく「自己触診」などと言われ、特定の触診の仕方を自身で学び、自分で乳がんを見つけることが大切であると考えられていました。しかし乳がんになったことがない方が見よう見まねで検診行為を自分で行うことは難しく、習慣化できなかったご経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
最近はブレスト・アウェアネス breast awarenessといって、まずは自分の乳房の状態を知っておき、変化があればそれに気づくことができればよいという考えが主流になってきています。生活習慣として自分の乳房を気にするところから始めます。見方や触り方に細かい決まりはありません。「自分の胸はいつもこんな感じだ」と知っておきましょう。
乳房の変化や違和感を感じたら、ご不安に思ったら、気軽に乳腺科を受診しましょう。
セルフチェックもやってみよう
もちろん適切なセルフチェックで乳がんを見つけられることもあります。「ブレスト・アウェアネスは意識した上で自己検診の方法もきちんと学びたい」という方は以下をご参考ください。
タイミング
乳房の状態は月経周期によって大きく変わります。効果的なセルフチェックのタイミングは、月経終了後1週間程度です。この時期は張りが解消され、乳房が柔らかくなりますので、より細かい変化に気付きやすくなります。この時期のセルフチェックを習慣化すると、普段の状態をしっかり把握できます。なお、閉経している場合は特に適したタイミングはありませんが、うっかり忘れてしまうのを防ぐため、毎月決まった日にセルフチェックを行うことをお勧めしています。
見た目チェックは鏡で
様々な向きやポーズなどで生じる変化を確認するために、大きな鏡の前で見た目のチェックを行います。まずは正面を向いて立ち、乳房の大きさや左右差、乳首の大きさや左右差を確認し、皮膚の出っ張り・赤み・腫れ・変色・引きつれ・くぼみなどの有無を確かめます。
次に両腕を前で組んでそのまま頭上に上げ、上半身を左右にひねって同様のチェックをします。さらに両手を腰に当てて腕に力を入れた状態で、脇や鎖骨の下、乳房の横の皮膚が張るようにして同様にチェックします。
バスタイムにしこりチェック
指のすべりをよくすることでしこりが発見しやすくなります。お風呂に入ってボディーソープをつけた状態でしこりを探してみましょう。
乳房が大きい場合は寝てしこりチェック
乳房が大きいと立ったり座ったりした場合、十分なしこりチェックができない部分が出てきます。そうした際には、枕や丸めたタオルを置いた上に背中を乗せて仰向けになり、胸を反る姿勢をとってしこりのチェックをしてください。右の乳房は左手で、左の乳房は右手でチェックしますが、もう片方の腕は頭上に上げるようにすると乳房が張ってしこりを探しやすくなります。
さわり方
しこりチェックに使う指は、親指以外の4本指です。人差し指・中指・薬指・小指の4本の指を揃え、指の腹全体を使って触ります。チェックする乳房の側の腕は上に上げて乳房を張り、反対の手の指の腹で触れていきます。
1全体のチェック
乳房の上側をすみずみまで触れていきます。上側の次は乳房外側から内側に寄せるような気持ちで全体をチェックしましょう。
2中央のチェック
外側から内側に向かって、肋骨の存在がわかる程度の強さで触れていきます。違和感がある場所は、指先をグリグリ回すようにしっかりチェックします。
3下部分のチェック
乳頭に向かって下から乳房を持ち上げるように、肋骨を感じる程度の強さでチェックします。乳房下部は脂肪が分厚いため、しこりの発見がしにくい部分ですので、丁寧にチェックしてください。
4鎖骨から乳房上部のチェック
右の鎖骨や乳房上部をチェックする際には、右手を下ろして腰に当てて、左手でチェックします。指の腹全体で、鎖骨の下を外側から内側へ向け、肋骨に沿って寄せるように触れていきます。左側も同様にチェックしましょう。
5脇から乳房横のチェック
右の脇と乳房横をチェックする際には、右手を腰に当てて左手でチェックします。右手の指を揃え、脇の下に差し込むように指の腹を押しつけるようにしてチェックします。この部分はつまんで調べるとしこりの有無がわかりにくいので注意してください。脇の下がチェックできたら、脇の下から乳房横、乳頭と指の腹でなでるようにしながらチェックします。
6乳頭のチェック
親指と人差し指で乳房を縦にはさみ、乳頭に向かって絞り出すような気持ちで指を進ませ、乳房をギュッと絞ってチェックします。しこりの有無に加え、乳頭からの分泌物がないかもしっかり確かめましょう。特に赤黒い分泌物があった場合には速やかに当院までご相談ください。